Facebookのある記事で、ショパンの「革命のエチュード」の主旋律に入る前の前奏部分の最後8小節目の4拍目が、f-es-f-es で、次の C 音に進んでいることが 、音楽理論上esがドミナントの音ではないということで、話題に取り上げられていたので、私もコメントを書いたのだが、書いていて思い出した書物があるので、ちょっとここに書き出しておこうかと思う。内容は「短3度の音程はなぜ心地よいのか」という趣旨で書かれているもの。(以下抜粋)

ピーター・フォン=デル=マーヴェ著、中村とうよう訳「ポピュラー音楽の基礎理論」より
「3度の階段」(P.142)
音楽の大きな謎のひとつが、誰もが不思議と快く感じてしまう短3度の魅力にある。オクターヴ、4度、5度など響きの単純な音程が音楽を組み立てる重要な柱になっているのは、よくわかる。しかし、短3度のように納まりが悪くて響きの面でもまさに不協和な音程が、人間の声にあれほどなじむのは、なぜだろう。安定した雰囲気を醸し出すのは、なぜだろう。答えはわからないが、それが事実であることは間違いない。下降する短3度だけで成り立っている古いチャントは、カトリック教会の典礼から小学校の運動場まであちこちに登場するが(譜例9)・・・(中略)・・・2音構造と言っても普通は構造外の音のひとつ二つが仕上げを飾るために加わることが多い。これこそが、トニックとそれに向かってピッチの下がった”ブルーな3度”だけから成る、ブルース旋法のまったく丸裸な形式だ。さらにこれはメロディーの不協和の、可能な限り最も単純な実例でもある。トニックは協和音、3度は不協和音であり、ドミナントセヴンスが主和音に解決するのと同じように、3度はトニックに解決する。
これを「ドロッピング」形式の二音旋法と呼んではどうだろう。上の音がトニックなら「ハンギング」形式になる。(中略)この旋法のドロッピング3度とハンギング3度組み合わせると、短3度二つもしくは中立3度二つからなる三音旋法になる。(記者注:「中立3度」とは、長3度と短3度との中間くらいの音程を持つ3度で、黒人のワークソングなどに見られるとのこと)
PopsKiso058
この、「中立3度」については、私もシンセサイザーを使って実験的に作ってみた音源があったのだが、物理的に中立の音程を作っても、私の耳にはどうしても、「中立」ではなく、短3度や長3度に聴こえてしまったという体験がある。平均律な12音の音律に慣らされすぎている!、自分であることが確認できた。